mozi - archives - 遠山純生-

 役を演じるにあたって、ホフマンは映像素材や音声素材でレニーの癖を数カ月かけて研究し、関連書籍を読み、彼のことを知っていた家族や友人たちと話をした。そして、レニーが愛すべき優しい男で、ひとりのアーティストだったのだと気づいた。レニーの友人に、バディ・ハケットというコメディアンがおり、彼はレニーの肖像画を描いていた。そしてホフマンは、このハケットの語る話を自ら語り直したのだった。レニーは“魅力的だがクソったれなキチガイ野郎”だという話を。ハケットによれば、2人が浜辺を歩いていて巨大な鮫の死骸に行き会った際、「レニーは陰茎を引き出してそれとファックした。奴は死んだ鮫とファックしたんだ!」とのことだ。ほかにも、常軌を逸したこんな話があるという。あるとき、レニーは40フィートもある挙手するヒトラーの写真を手に入れ、自らのショウの開催告知を添えてL.A.フリーウェイに掲げた。

 レニーがトレンチコートに靴下を1足はいただけというだらしのない身なりで舞台に登場し、麻薬が切れてしゃにむに歩き回りながら切れ切れに思いついたことをしゃべる最後近くの場面は、実際にその晩のレニーの舞台を観ていた観客の1人が所有していた海賊版テープの記録に基づいたものだという。つまり、レニーが舞台上で動揺するまさにその瞬間をとらえた音声から再創造された場面なのだ。この場面に限らずホフマンは、実際の聴衆を前にして、ライヴでレニーの有名なネタの数々を披露した。

 また、ホフマンが撮影することを熱望したが、結局撮影されなかった場面がある。実際にあった出来事である。裁判官がレニーに対し、もし舞台で卑語を口にしたら再逮捕され、警官たちが彼のショウを監視することになると警告する。ある晩、レニーは舞台の脇にひとつのドアを見つけ、そのドアはどこに通じているのかと尋ねる。クラブの従業員がハリウッド・ブールヴァードに出られるよと答えると、レニーは50フィートのケーブル付きマイクが欲しいと従業員に言う。マイクを渡されたレニーは、それを持って外に出ると、ショウを始める。舞台には誰も立っていない。彼は言う。「紳士淑女の皆さん、私は今夜舞台で卑語を口にしたら逮捕すると申し渡されました。だからハリウッド・アンド・ヴァインの一角で外に立っています。バカ野郎(コックサッカー)、ゲス野郎(マザーファッカー)!」。

 完成作がカンヌ映画祭で上映された際に、ホフマンはこう発言している。「レニーはとても刺激的な人物だ。撮影が進むにつれて、この男の抱えた苦しみが一体どんなものだったのか、ますます実感するようになった。レニー役を演じたときには、本当にそんな風に思っていたんだ。もっとも、僕の演じた役柄がいろんな問題を抱えていたことを口実にして、内面的になり過ぎないようにしていたけれどね。ボブの映画が受け入れられたことには少しばかり驚いた。僕は、レニー・ブルースがアメリカ人の心の中にはまだほんのわずかに生き続けていたんだなと思った。今では、人々は彼にどちらかといえば好意を感じている。僕らアメリカ人はいつもそんな風なんだ」

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