ジェノヴェ自身は、シャブロルと組むようになった経緯をこう語っている。
 「クロードは作りたくて『虎』シリーズを作ったわけじゃない。急に金が必要になったから作ったんだ。そこで僕は彼にこう言った。“クロード、もうこれからは心配ないぞ。君に銀行口座を開いてやろう。必要に応じて金を使っていいんだ”とね。そのうえステファーヌ・オードランが贅沢な暮らしをしている時期だった。だから大金持ちでもないクロードは、経営難に陥っていたんだ。銀行が時々僕に電話してきて、あなたの預金残高はもうありませんよと言ったことを覚えている。でもそのおかげでクロードは、もう財政問題をしょい込まなくてもよくなったし、脚本執筆に着手し、何ものにもとらわれずに自作映画の構想を練ることができるようになったんだ。例えば、クロードが『肉屋』のアイディアを携えて僕の事務所にやって来て、僕に二ページぶん手渡し、それから僕がそのページを読むのを待ちながらまた出て行った。それはこんな風に始まっていた。“彼女はエレーヌという名で、教師。彼はポールという名で、肉屋。”と。その後クロードが戻って来ると、僕はこりゃ面白いねと彼に言った。おかげでクロードは、その題材を発展させることができるようになった。そんな風にして二人で仕事したんだ」。

 『ジャガーの眼』の脚本執筆に参加したダニエル・ブーランジェが、シャブロルにジェノヴェを紹介した。『虎』シリーズの延長上にあるような娯楽スパイ映画『コリントの道』(ブーランジェ自身も脚本執筆で関わっていた)の監督を、シャブロルに任せようとしてのことだった。しかしシャブロルは、代わりにポール・ジェゴフと共同で書き上げていた『女鹿』の脚本をジェノヴェの手にゆだねた。それまで数年間、注文仕事しか監督していなかったシャブロルは、ジェノヴェが『女鹿』の製作を引き受けてくれることを期待していた。『女鹿』の企画は、既にその時点で二年間に渡ってパリ中の製作者に拒否されていたという。結局ジェノヴェは、『コリントの道』をまず監督するなら、という条件で『女鹿』を製作することに同意したが、その後製作段階に入っても配給業者が見つからないままだった。

 『女鹿』は、『コリントの道』で初めてシャブロルと組み、友人になった(そしてその後『不貞の女』『夜になる直前』で主人公を演じた)俳優ミシェル・ブーケに捧げられている。もっとも、『女鹿』にブーケは出演していない。

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