ミレイユ・ダルクは語る


 ミレイユ・ダルクが約25年ぶりに来日を果たした。70年代後半から出演作の公開が途絶えている上、未公開に終わった出演作も少なくないので、若い人にはあまり馴染みのない女優さんかもしれない。だが『恋するガリア』(65)をはじめとするジョルジュ・ロートネル監督との一連の作品や、『ジェフ』(69)、『栗色のマッドレー』(70)など、公私共にパートナーだったアラン・ドロンとの共演作などでの、あだっぽい魅力に溢れた若き日の彼女を覚えておいでのファンもいらっしゃるだろう。

 会ってみてまず驚いたのは、彼女が昔映画に出ていた頃とほとんど変わらない、スリムで若々しいプロポーションを保っていたことだ。出世作『恋するガリア』で〝ガリア・ルック〞という言葉を生んだほど、当時彼女がスクリーンで見せたカジュアルでスレンダーな魅力はきわめて新鮮な印象を与えたとされる。
 「ファッションに関しては当時から全部自分でやっていました。スタイリストはいませんでした。あの頃そんなことをしていたのは私ぐらいのものだったんじゃないかしら。当時はギ・ラロッシュによくデザインしてもらっていたことを覚えています。今日の服はアルマーニです。好きなデザイナーは彼とミッソーニ。どちらかと言えば今はわりとクラシックな感じで着たいので、こんな感じになってしまうのかもしれません」

 実はこのインタヴュー、連絡の不手際で彼女の方に写真撮影の予定が伝わっていなかった。そうした事情に長旅の疲れが重なってか、最初は撮影を断られたが、いざカメラマンがカメラを向ければそこはプロ、ナチュラルな表情を見せてくれた[注:残念ながら当HPに写真は掲載できない]。彼女自身、ファッション写真を撮っていた時期もあるのだ。さて、本題の映画の仕事について聞いてみると、
 「もう10年ぐらい前から、ほとんどテレビドラマにばかり出ているんです。そういうものはたぶん日本には来ていないと思います。ロートネルと知り合ったのは、私のキャリアの本当に最初の方です。彼とは14本の映画を一緒に作りました。もう約18年ぐらい、彼とは仕事をしていないんですけれども……」

 ダルク&ロートネルのコンビ作で、日本でも公開された映画の一本に、『女王陛下のダイナマイト』(66)がある。タイトル通り、ダイナマイトを使った場面が見せ場になっている滅多やたらと面白い喜劇だ。とりわけ、ダイナマイトで橋を吹き飛ばすと、両端だけが爆破されて真ん中が残り、そこにイギリス人の(ビートルズ風)ミュージシャン四人組が立ちすくんでいるところを空撮でとらえた場面など、一度見たら忘れられないくらい強烈なイメージだった。彼女自身はこの場面には出ていなかったが、どうやって撮ったか御存知ですか、と聞いてみた。
 「あの橋は南仏の方にあったものですけど、大洪水のせいであんな風に真ん中だけ残ったまま崩れ落ちずに立っていたのです。それを映画の撮影を理由に使わせてもらったわけです。ミュージシャン役の人たちはヘリコプターで上に連れて行ったんですよ。30年も前の映画なので、細かいことはあまりよく覚えていないんですけど、でも映画を覚えていてくれたことにとても感動しています」

 ロートネルと彼女が組んだ映画では、『太陽のサレーヌ』(67)、『牝猫と現金』(67)、『狼どもの報酬』(72)、『愛人関係』(73)、『チェイサー』(78)も公開されている。とりわけ前述の『女王陛下のダイナマイト』のみならず、『狼どもの報酬』にもイギリス人が登場してからかわれているのだが、後者ではダルクの英語の家庭教師役で面白い喋り方をする人物が出てきて、いささかやりすぎではないかと思えるほど徹底的にコケにされていた。
 「ロートネルの映画では、他の隣国の人たちも結構からかわれたりするのですが、特にイギリス人とはあまり仲のいい国民同士ではないので、茶化すことがわりと多かったようですね。家庭教師役の人は、有名なフランス人の喜劇役者[『ジョナスは2000年に25才になる』(84)、『アメリ』(01)などに出演したリュフュ(1942年~)のこと]で、素晴らしい俳優さんです。ロートネル監督はこういうおふざけタッチの映画でも、ちゃんとした才能のある俳優さんを使っています」

『狼どもの報酬』も荒唐無稽な面白さに満ちたアクション・コメディだったけれども、特にジャン・ヤンヌとのベッド・シーンで、彼女がベッドの上に浮き上がってクルクル回転したり、何人にも増えたりするところは、出鱈目極まる愉快な場面だった。
 「あの場面は脚本の段階からあったものですが、30メートルほどもある巨大なベッドを使って撮影したんです。ベッドの上に浮かんで回転したりする体験は、あらかじめ書かれた場面を演じているというよりは、ほとんどカメラの前でアドリブをしているような楽しさでした」

 

>> 次ページへ

ARCHIVES TOP に戻る
mozi - archives - 遠山純生-

Copyright(C)2011 mozi by Sumio Toyama All Rights Reserved.

Top Page
column
studies
rare films
archives
profile
about this site