撮影開始前に、アルトマン、テュークスベリー、ビック、リットー、トミー・トムスン、トーマス・ハル・フィリップス(ミズーリ州映画連盟の代表者で、この後数本のアルトマン作品の協力者になる)は、何日もかけてミズーリ州を車で回った。この巡回で彼らは新たにいくつか撮影地を発見し、場所の感覚を身に付けたテュークスベリーは脚本を書き直した。アルトマン自身、まず重要なのは実際に撮影地に行き、そこで起こっていることを肌身に感じることだと考えていた。『ギャンブラー』『イメージズ』『ロング・グッドバイ』と連続的にアルトマン作品の撮影を担当したヴィルモス・ジグモンドのギャラが高騰し過ぎたため、本作の撮影監督はフランス人ジャン・ボフェティ(ロベール・アンリコ、アラン・レネ、クロード・ソーテらとの仕事で知られ、79年のアルトマン作品『クインテット』の撮影も担当)が務めている。英語を話さないボフェティは、通訳を介してクルーとの意思疎通を図った。ミシシッピ州のキャントンやジャクスンで主にロケーション撮影を敢行。アルトマンはこの地方を実際より良く見せるつもりも悪く見せるつもりもなく、あくまでありのままの風景を画面に収めることを望んだという。どんよりと曇った空と時おり降りしきる雨、濡れた鋪道と水たまりの陰鬱な画面が印象的だが、豪雨や洪水のおかげで時々撮影地を変更することも余儀なくされた。雑踏の場面がなく、通りを撮影した場面であまり人が見当たらないのも、天候の悪さに起因しているそうだ。

 衣装は、映画監督ピーター・ボグダノヴィッチの元妻で、30~40年代の南部を舞台にしたボグダノヴィッチ監督作品『ラスト・ショー』(71)や『ペーパー・ムーン』(73)の美術や衣装を手掛けたポリー・プラット。他には編集のルー・ロンバルドや第二班監督および助監督のトミー・トムスン、デザイン・コンサルタントのスコット・ブッシュネルら、アルトマン組が起用されている。


●純愛物語とラジオ放送の使用

 ストーリーは以下のように始まる。
 1930年代後半、大恐慌時代のミシシッピ州。刑務所から脱獄した二人の囚人チカモウ(シャック)とボウイ(キャラディン)が、タクシー運転手と共に車を走らせて来たもう一人の囚人Tダブ(ランセン)と路上で合流、車を奪って森の中へ逃げ込んで一夜を過ごし、再会を約束して解散する。翌日、チカモウの親戚モブリー(スケリット)が経営するガソリン・スタンドで三人は落ち合う。その家には若い娘キーチ(ドゥヴァル)が同居していた。ボウイとキーチは言葉少なに語り合う。銀行強盗を始めた三人組は、最初の犯罪に成功し、用心して今度はTダブの義妹マティ(フレッチャー)の家に拠点を移す。彼らは再び銀行強盗に成功するが、慎重を期してまた解散する。ところが、ボウイとチカモウがそれぞれ自分の車に乗って一緒に次の滞在先へ向かっているとき、ボウイは不注意から自動車事故を起こし傷つく。ボウイを助け起こしたチカモウが近寄って来た警官二人を射殺する。その後チカモウはボウイを連れてモブリーの家に行き、離れの小屋に彼を置いてもらうことにする。翌朝、ボウイの眠っている小屋に入って来たキーチは彼を看病し、次第に二人は惹かれ合ってゆく。

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