酒場の中。ビールのジョッキを手にした中年男が、戸口に立ち続けているユパに、心配しないで俺たち(のサッカー観戦)に加われと呼びかける。彼は、その日におこなわれているサッカー試合で応援チームが勝利することを確信しているようである。戸口から店内を振り返ったユパは、また発作に襲われそうだと応じながらテーブルに着く。中年男は自分のビールを飲み干し、店内で一緒に歌をうたい、ビールを飲みながらカードゲームに興じる老婦人四人組に、今夜のお祝いの準備をしておけと告げて、店を出ていく。

 店主はビールジョッキを洗い、ビールを前にしてひとりで座っているユパの方を眺める。ユパが自分の方を見ると、店主は目をそらす。ユパはふと、壁に飾ってあるサッカーチームの記念撮影写真に目をやる。店主は、奥のテーブルにひとりで座る若者の方を見る。その若者は、ビールを飲み煙草を吸いながら、読書に夢中になっている。店主は空のビール瓶が入ったケースをわざと床に落として大きな音を立て、若者を驚かそうとするが、反応は得られず、代わりにユパがぎょっとした表情を浮かべて音のした方を見る。

 ユパは何かの粉薬を飲もうとするが、大半をこぼしてしまう。店主が読書中の若者を指して、「見ざる聞かざるだな、19世紀の煙草を吸って、ビールを五杯注文した」とこぼす。ユパは、あいつのおかげで心臓がドキドキさせられる気がする、と言う。店主はなおも若者をサカナに、あいつ何を読んでいるのかな、ポルノかそれとも三文小説か、としゃべり続ける。店の奥からつまみ(酢漬けのキャベツの千切り)が入った鍋を手にした老人が出てきて、ビールを一杯注文する。ユパが「今日はこの街の誰もがサッカー試合を観戦しているが、あの若造は観戦に加わらないばかりか気に留めてもいない」と言う。店主は、あいつが俺の息子なら喜んでぶん殴り、煙草をくわえるのをやめさせてやる、と息巻く。彼は若者の席にジョッキ一杯のビールを運んでテーブル上に置くと、相手の顔をじっと見て、ひどいもんだと呟く。若者は本を読みながら泣き始めたようだ。老人が、「今の若者には理想がないからさ、私が彼の年齢だった頃にはすでにDFCでサッカーをプレイしていた」と話し始める。彼は戦争中に一緒にプレイした同じチームや対抗チームの有名選手たちの話を始め、ユパと一緒に盛り上がる。ユパがカンハウゼルという選手について尋ねると、この元サッカー選手の老人があんたは時代を混同していると指摘する。偶然、読書していた若者が急に大笑いを始める。勘違いしたユパが若者に向かって、この馬鹿野郎、なめるなよと言う。店主が「そうだ黙ってろ」とユパに同調しつつ、殴ってやってもいいが通報しやがるかもしれん、とひとりごち、若い奴は殴ってやった方がいいこともあるんだと自説を唱える。

 まだ大通りをぶらついている先ほどの若い女が、窓から店内の様子をうかがう。老婦人たちは相変らずうたいながらカードを続けている。最高の選手は誰かという点に関し、ユパと元サッカー選手の老人は意見が一致しない。老人は、今の連中はサッカーについて何一つ知らないと言い、健康に良いからとキャベツの千切りを食べるようユパに勧める。しかしユパは食べることを拒否し、再び粉薬をビールで流し込む。


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