『私、私、私……そして他人たち』
(アレッサンドロ・ブラゼッティ監督、1966年、イタリア=フランス)


 クレジットタイトルを見ていると、題名には「心の投影たちとの会見」という副題がつき、続いて「利己主義のむな
しさに抗する映画」との文字が出てくる。原案は監督のアレッサンドロ・ブラゼッティ自身によるもの。オリジナル脚
本は、なんと13人がかりで執筆されている。そのなかにはブラゼッティのほか、エンニオ・フライアーノ、スーゾ・チ
ェッキ・ダミーコ、アージェとスカルペッリ、レオナルド・ベンヴェヌーティ、ピエロ・デ・ベルナルディ、俳優でも
あるカルロ・ロマーノら錚々たる面々が含まれているのである。

 主人公サンドロ(ワルター・キアーリ)は著名なジャーナリストであり、人間の利己主義を主題とした記事を書こうとしているところだ。冒頭、列車の食堂車内にいる彼は客席を見渡して観察しながら、人間なんてものは自分本位に振る舞うもので、そのことを意識すらしない、と独白する。しかし例外はいる。世の中自分のことしか考えないような人間ばかりだが、そうではない人間が。サンドロが目をやった先のテーブルには、額に手を当ててうつむき、ひとり陰鬱に考え込んでいる様子の中年男が着いている。サンドロはこの男が「例外」的存在だと考え、男の心の声を代弁してみる。「われわれはどこから来たのか? 明日の世はどうなっているだろうか?」と。給仕が中年男に近づき、油はバターかオリーヴオイルか、キノコにタマネギ風味を添えるかと問うが 、男はどうだっていいから好きなようにしてくれ、と答える。しかしその後、彼は立ち去ろうとした給仕を呼び止め、タマネギはやめろと命じる。このときサンドロは考え直す。やはり例外なんてないのだ、と。そのくせ自分がテーブルに着くや、ウィスキーの銘柄は「シーバスリーガル」で、ソーダ割りはダメ、氷(しかも少量の)のみ、と細かく注文するサンドロなのであった。注文した後、窓外に視線を向けつつ彼は自問する。
「他人たち」とは何なのか?

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