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mozi - モンテ・ヘルマン研究- 遠山純生-

 ある役者に対して当たり散らしたこともあったな……ボブは酒飲みだった。それが命取りになったんだ。大袈裟に言っているわけではなく、一日に60本のコカ・コーラを次から次へと飲んでいた。あんなに砂糖とカフェインを摂取すれば、恐らく何らかの影響があったに違いない……ある日爆発(口笛を吹く)するんじゃないかといつも思っていた。そして、リメイク版『ロンゲスト・ヤード』で私も演じた役柄を演じていた奴[マイケル・コンラッド]に対して、実際にそれが起こってしまった。彼も元選手で恰幅のいい男だったが、ボブはその役者に波風立てずに立ち去ることを許さず、彼を攻撃した。選手たちが作戦を決めるために輪になって群がる、フットボール映画には必ず登場する典型的な場面を撮影しているときのことだった。キャメラは地面に据えられて、上に向けられていた。われわれはみんな立っていて、私が試合の一時停止を要求し、みんなで輪になった。ボブがコンラッドに対して怒り、その怒りが収まらなくなった。ある時点で、私は[コンラッドの]目に涙が浮かんでいるのに気づいた。やっとボブは怒るのを止めた。もう充分だったからだ。同じ日のことだったけれど、後になってボブは彼に近づいて行ってこう言った。「コンラッド、君は良い仕事をしたな」。コンラッドはまるで、両肩に載っていたこの世の重荷から解放されたみたいに見えたよ。彼が立ち直ったとは思わなかったが。実際私は、コンラッドが荷物をまとめてスタジオを離れることをほとんど確信していた。

 私にとって本当に悩みの種だったのは、レイ[・ニーチュケ]だった。レイはカチンコが鳴る度に私を押しつぶした。ある時点で彼に言ったんだ。「レイ、あまりフェイントをかけないでくれ」。彼は顔色一つ変えないで私を見た。「ヘルメットを被ってプレイしなさい」「オーケイ、構わないよ」。さんざんぶちのめされた。数日後、グラウンドにはセミプロの選手たちがいた。彼らみたいにそのプレイぶりが評判になっている連中の方が、むしろ卑劣なんだ。実際連中はフットボールのことをよく知らない。ただ何人かに怪我させてやろうとしてやっているに過ぎない。あるとき、奴らの内の二人が、かなり強くぶつかってきたもんだから、私はフィールドの外まで飛ばされてしまった。ベンチまでぶち壊しながらね。その場面は映画の中にあるよ……レイがこう言っているのが聞こえた。「バートには危害を加えるな……」。それで、私の近くを通り過ぎながら、彼は「……あれが俺の仕事なんだ」って(笑)。


── 1本の映画の中で、フットボールの場面が45分も続くのを観た者はいませんでした……。

BR 試合運びがうまくいかなかったら、映画を完成させることはできなかっただろう。終盤だけじゃなく、中盤の半分と終盤がフットボール場面だった。もし観客が試合に迫真性を感じなかったら、何の価値もないものになっただろう。それほど試合は重要だった。映画の最初の試写があったときのことを良く覚えている──サン・ディエゴの近郊で上映されたんだ。あんな風に観客が反応するのを目にしたのは生涯初めてだった。彼らは叫び、ポップコーンを投げ付けながらホールを走り回っていた。要するに彼らは、フットボール試合を観戦していたわけだね。観客がひどく映画に引き込まれている現場に出くわしたんだ。だがホール全体がわめき立て始め、足を踏み鳴らし始めるのなんて、見たことがなかったからね。本当に幸福な気分だったよ。ボブを思って幸せだったんだ。そして彼は私を思って幸福だったわけだ。

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