ロバート・オルドリッチ書簡集 @−2

■以下は、ローマ滞在中のジョン・カサヴェテスへ宛てられた私信。日付けから、カサヴェテスがローマで撮影されたイタリア映画『俺はプロだ!』(アルベルト・ディ・マルティーノ/イタリア公開は1968年11月)に主演した直後の時期であることがわかる。彼はこの後続けて、合衆国ロケが敢行された(スタジオ撮影はローマ)イタリア映画『明日よさらば』(ジュリアーノ・モンタルド、69)に主演する。


1968年7月30日
ジョン・カサヴェテス様

親愛なるジョン、

 そう、ブロウアップは何箇所か粒子が荒れている。そう、音声にはいらいらさせられるところがある。そう、ストーリーには通常の始まりも真ん中も終わりもないと言っていい。そう、少しばかり長すぎるかもしれない(だが長すぎない映画などあるだろうか?……とりわけ私の映画はどれも長すぎる)。

 とはいえ、君の映画 [『フェイシズ』] は気に入った。卓抜に演出され、見事に演じられていると思った。これほど申し分のない演技が一本の映画の中で披露された例は、なかなか思い出すことができない。まったくのところ、“みんな”の手柄だ……私は“みんな”という言葉を、もっとも喜ばしい意味で用いている。それに言うまでもないことだけれど、ジーナ [ ・ローランズ ] は素晴らしかった。君の映画があの登場人物たち、あの結婚生活、あの一見したところ大したことがないけれど実は非常に深刻な問題を、ほとんど外科手術的なまでに深く掘り下げた研究であるところに、本気で驚かされたのだと思う。

 親愛なるジョン、君にどう言えばいいのだろう? 『フェイシズ』は素晴らしい作品だし、驚くべき映画だ。もし仮に『フェイシズ』がイタリア語で、チェコ語で、あるいはフランス語で撮られていたとしたら、傑作として認められただろう。英語で作られているから、この映画がどのように受け止められるかなんとも言えない。だが君は、『フェイシズ』が偉大な映画だと承知しているはずだ。おめでとう。

 胸をはって進め。

 心から挨拶を送る。

                                    愛を込めて、
                                ロバート・オルドリッチ

前ページへ <<

Copyright(C)2011 mozi by Sumio Toyama All Rights Reserved.

mozi - モンテ・ヘルマン研究- 遠山純生-
mozi - ロバート・オルドリッチ研究 - 遠山純生-
Top Page
column
studies
rare films
archives
profile
about this site

>> 次ページへ