弟二幕。
 一週間後の深夜。キャッスル邸を訪問中のブリス夫妻を、チャールズとマリオンがもてなしている。チャールズは彼らに、数年前に製作された自らの主演映画を16ミリで上映して見せたところだった。バディもコニーも、チャールズをいまだ最高の俳優だと誉めそやす。しかしチャールズは、今の自分の演技は10年前の自己模倣でしかないと言う。やがて疲れて眠そうなバディの様子を見て取ったマリオンは、コニーに帰宅をうながし、ブリス夫妻は暇を告げて出て行く。
 二人が帰った後、なぜブリス夫妻を招待したのかと問うマリオンに、チャールズは答える。バディに対して疚しさを感じており、何ヶ月も彼を避け続けてきたからだ、と。マリオンが、コニーは私たちが別居中であることを知っているのかと聞くと、チャールズは知らないだろうと言う。よりを戻したがっている夫に対し、マリオンは二人の関係はもう終わってしまったのだと答える。彼女はチャールズが自らの本性を偽って生きていることを彼の罪だと考えており、夫がバディを自らの身代わりとしたこと、その件に自分が加担したことを許すことができなかった。さらにマリオンは、チャールズが罪悪感から堕落し、妻としての自分を軽んじるような生活を始めたことを耐えがたく思ってもいた。
 その後、ハンクが自分を迎えに来るとマリオンが言うと、チャールズはハンクに断りの電話を入れて今晩は一緒にいてくれないかと頼む。マリオンはチャールズとの第二子を身ごもっており、妊娠六ヶ月だった。彼女は突然そのことを打ち明け、明日その子どもを中絶しに行くつもりだと話し、夫を驚かせる。そして、チャールズがホフとの契約を更改しなければ、その子を産むつもりだったとほのめかす。二人はビリーの親権をめぐって口論する。
 ハンクがマリオンを迎えに来る。チャールズがハンクに、マリオンに結婚の申し込みをしたのは本当かと尋ねると、ハンクは本当だと認める。マリオンが弁護士に会うつもりだと口にすると、チャールズは再び彼女に考え直すよう嘆願する。しかしマリオンはきっぱりと拒絶して立ち去る。チャールズはハンクがニューヨークへ発つ前に、彼と会う約束をする。
 ハンクと入れ替わりに、コイがキャッスル邸を訪れる。酒を飲みながら、コイはひき逃げ事件の際チャールズの車に同乗していた女優ディクシー・エヴァンズが、あるパーティで自分は事件の真相を知っているとほのめかしていると話す。マリオンとのよりを戻すことだけを望んでいるチャールズは、ディクシーと車に乗っていたことが露見するのを怖れる。彼はディクシーの腹を探ろうと彼女に電話をかけ、自宅に誘う。コイはディクシーを買収したが、彼女は金よりもチャールズとの結婚を望んでいると口にした。二人の結婚を望む者など誰もいないのだから、結婚の可能性を除外して、ディクシーを黙らせる選択肢を検討しなくてはならいないとコイは言う。しかし間もなくディクシー本人がキャッスル邸にやって来るため、彼女に嫌われているコイは急いで出て行く。そこに、眠っていたラッセルが呼ばれたと思って起き出してくる。ラッセルは正面玄関のドアベルの音に気づく。チャールズはラッセルに、若い女性のお客が来たから中に招じ入れたらまた寝てくれと命じる。
 ディクシーがやって来る。神経質な様子の彼女はひとしきり無駄話をした後、あなたは親切だから好きだとチャールズに言う。そしてディクシーは、十代の頃家族に見捨てられた過去を語る。彼女はチャールズが自分を呼び出した目的を察していた。ディクシーは自分の演技ではなく身体目当てで言い寄ってくる、ホフを始めとするスタジオの連中を嫌悪しており、事故の件を何度もほのめかしたのも、彼らを挑発して密かに復讐するためだった。自分は引き際をわきまえているし、事件のことは決して口外しないと彼女は言うが、チャールズは不安を隠せない。
 そこに突然、マリオンが姿を現わす。チャールズがマリオンにディクシーを紹介すると、ディクシーはその場を取り繕った後、スタジオに関して話したことは全部本気だと言い残して辞去する。ディクシーが去った後、マリオンは夫の浮気癖へのあてつけとして皮肉を言う。チャールズはマリオンの誤解を解こうとするが、感情的になった彼女はタクシーを呼んで再び出て行こうとする。先のチャールズの懇願が気になったマリオンは、ハンクに頼んでわざわざ送り返してもらったのだった。帰ろうとするマリオンに対し、チャールズは再度説得を試みる。マリオンは、あなたを殴ってやりたいと言って泣きながら夫を叩くが、チャールズは彼女の手首をつかんで止めさせ、やがて彼女を抱擁する。その後マリオンは、自室で眠ると行って階上へ行く。チャールズは階段を上がる彼女を見送る。

第三幕。第一場。
 数日後の午後遅く。キャッスル邸でマリオンが電話を使って食料品の買い物をしている。彼女の傍らには、買い物リストとペンを手にしたラッセルが控えている。チャールズとナットが中庭で話をしている。電話が鳴り、ラッセルが応じると、コイの秘書からだった。すでに二度目の電話だったが、ラッセルはチャールズが取り込み中の旨伝え、電話を取り次がない。先日とは打って変わって快活な様子のマリオンは、40分で戻るとラッセルに伝言して外出する。
 その後、チャールズとナットが家の中に入って来る。チャールズがナットにマリオンと和解した旨を告げると、ナットは我がことのように喜ぶ。ナットと入れ替わりに、バディがやって来る。バディは、コニーがろくに家事もせずに遊びまわっていると不平を漏らす。同時に彼は、妻が自分を裏切っているのではないかと怖れていた。チャールズはバディに、コニーを連れてわれわれ夫婦と一緒に夕食へ行こうと提案し、彼を元気付けて送り出す。
 次いで隣人のフレアリー医師が、マリオンへの花束を持って訪れる。チャールズが医師と雑談していると、今度は先日の約束通りハンクがやって来た。ハンクはマリオンから夫婦が和解したことを聞き、チャールズが契約更改したことを新聞で読んでいた。ニューヨーク出立を目前に控えたハンクは、マリオンのことが心配でならない、君と一緒では彼女は幸せになれないと思う、とチャールズに言う。そして、君の生来の理想主義はハリウッドで生きていくには致命的な欠陥となっている、中途半端な理想主義は魂の腹膜炎であり、アメリカは中途半端な理想主義だらけだ、かつての自分は忘れてホフの言いなりになればほどほどの幸福を得られるし、それを奥さんにも手渡せるだろう、と忠告する。「中途半端な男は女性を決して幸せにできない」というハンクの言葉を聞いたチャールズは激怒し、マリオンは君のものにはならないぞ、と言い放つ。しかし最終的には二人の友情が勝ち、彼らは別れを惜しんで、握手して固く抱擁し合う。
 ハンクと入れ替わりに、コイがやって来る。コイは折り返し電話を寄越さなかったことでチャールズを責め、ホフがディクシーに対して怒りを爆発させ、大変なことになっていると告げる。そして、出来事の経緯を語る。ディクシーはホフとの会合の約束に一時間遅れた上、酒に酔って犬を連れて現われた。ホフがお得意の大仰な感情表現で十八番の昔話を始めると、ディクシーがそれを嘲った。激怒したホフはディクシーを殴り倒し、青あざができるまで蹴りつけた上、彼女のあばら骨を折ったのだった。ディクシーは暴行を受けたことを自分が実証できないことはわかっているが、代わりにチャールズのひき逃げ事件をマスコミに暴露しようとしていた。
 コイはチャールズに、今酒場で飲んだくれているディクシーを彼女のアパートへ連れて行き、マティーニを飲ませるように言う。マティーニ用のジンにはすでに混ぜ物が施されていた。さらにチャールズには、アリバイまで用意されている。コイの提案を殺人教唆だと悟ったチャールズは、彼の考えをホフとナットに伝えようとする。そこにマリオンが姿を現わし、夫婦が別居しているものと思っていたコイは驚く。戸惑うマリオンに、チャールズは後で事情を説明するからナット電話してここへ来るよう伝えてくれと言う。そして彼自身は、電話でホフを呼び出す。
 

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