第六回

ベアード・ブライアントと『クール・ワールド』A


●映画『クール・ワールド』の成立

 
『恐ろしい時間』から長編劇映画第一作『ザ・コネクション』(62)を経て、シャーリー・クラークが再び子どもたちを主題にして監督を手がけた長編第二作が『クール・ワールド』だ。

 『クール・ワールド』には原作がある。この映画は、白人作家ウォーレン・ミラー(1921年〜1966年)が1959年に発表した同名小説(未邦訳)と、ミラー自身が映画監督ロバート・ロッセンと共同で同小説の翻案を手がけて戯曲化した作品に基づいているのだ。しかし舞台版は、ユージーン・オニール・シアターで1960年2月22日と23日の計二回しか上演されず、興行的に大失敗していた。

 そもそもこの映画は、すでに『ザ・コネクション』の製作に約3000ドルを出資していたフレデリック・ワイズマンが『クール・ワールド』の原作小説を読み、自ら映画製作に参入しようと考えてクラークに企画を持ち込んだことがきっかけとなって実現したものだった。その後ワイズマンとクラークが原作者ミラーを訪れた際、ミラーはクラークの映画を観たことがあり、しかも気に入っていることがわかった。

もっとも、クラークによれば、ミラーは戯曲版が成功しなかったことに懲りて、好きなように映画にして良いと彼女に言ったのみで、映画版には一切関与しなかった(脚本も読もうとしなかった)。そこでクラークは、当時の同棲相手で舞台版および映画版『ザ・コネクション』に出演した黒人俳優カール・リー(黒人俳優の草分けの一人カナダ・リーの息子)と共同で脚本を執筆したが、このとき基本的にダイアローグや登場人物の変更等翻案を主導したのはリーだったという。脚本には、彼とクラークが数多くの子どもたちに取材をした結果も反映されている。たとえば二人は彼らに、銃を持っているか、持ちたいと思うか、銃があったら老人から金品を奪うか、といったことを尋ねた。同時に、自身ハーレム生まれであるリーの経験も脚本に盛り込まれた。

mozi - 合衆国映画の復興期- 遠山純生-

【合衆国映画の復興期】
はじめに
第一回
 ヘレン・レヴィット、ジャニス・ローブ、
      ジェイムズ・エイジー @


第二回
 ヘレン・レヴィット、ジャニス・ローブ、
      ジェイムズ・エイジー A


第三回
 ひな菊を摘んで @

第四回
 ひな菊を摘んで A

第五回 
 ベアード・ブライアントと
        『クール・ワールド』 @


第六回 
 ベアード・ブライアントと
        『クール・ワールド』 A


第七回 
 ウィリアム・フリードキンと “ドキュメン
タリー的” 犯罪映画の系譜 @

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