【合衆国映画の復興期】
はじめに

第一回 


第二回 

第三回 

第四回 

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第六回 

第七回 

第八回 

 確かに、『ソニーとシェールのグッド・タイムス』(67、Vのみ)でハリウッドに進出して以来、フリードキンにとって五作目の長編劇映画演出作にして、ニューヨークで全編ロケーション撮影がおこなわれた犯罪映画『フレンチ・コネクション』には、先に見た都市犯罪映画の視覚的諸特性をすべて認めることができる。さらに言えば、『フレンチ・コネクション』は、その前後に公開されたどの「ニュー・ハリウッド」映画とも(それどころかほかのどのフリードキン作品とさえも)異なる画作りがなされている。つまり、先述の視覚的諸特性をすべて満たしながら、なおかつ独特なのだが、実はこうした事態は『フレンチ・コネクション』に続くほかの都市犯罪映画にもあてはまるのだ。要は、「ドキュメンタリー的」都市犯罪映画は同じ要素から出来上がっていながら、ほとんどすべてが異なる外観を備えているのである。すでに見たように、『クール・ワールド』や『ポール・クランプ事件』の再現劇部分、『シカゴの悪夢』といった作品が都市犯罪映画の必要条件をほぼすべて満たした先駆的存在であったと同時に、それぞれが他のどの作品とも異なる映像と音声の組み合わせを擁していたように。

 その一方で、前記した諸特性が都市犯罪映画のみに特有のものかといえば、必ずしもそうとは言い切れない。こうした要素のうちいくつかは、アルジェリア戦争時代のアルジェリア人対仏抵抗組織の行動に材を取ったイタリア=アルジェリア合作映画『アルジェの戦い』(ジッロ・ポンテコルヴォ、66)にすでに見られたものであった。むしろ上記要素は、それ以前から国籍を問わずある種の劇映画にときおり認められた視覚的特性でもあったのだが、公開年にヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞し広く注目されたことで、同作が(その実録風の内容と相俟って)視覚面における少なからぬ影響をその後のハリウッド映画におよぼした可能性は考えられる。

 ポンテコルヴォ自身、『アルジェの戦い』の外観を映画館やテレビで上映(放映)されるニューズリールのそれに近づけようとし、同時に(長編劇映画として)高水準の技術的達成をも目指した、と語っている。要するに、ニューズリールめいた外観をこしらえ上げることを目指しながらも、プロとして完璧に画面をコントロールしつつ高い質を保った画作りを意図したというのだ。したがって『アルジェの戦い』には、「本物の」ニューズリール素材やストック素材は一切使用されていない。撮影監督のマルチェッロ・ガッティは道幅が狭く階段の多い“カスバ”(城下町の土着民地区)でのロケーション撮影において、ドリーを敷くことが不可能であったために手持ちのアリフレックス・キャメラによる撮影を採用している(映画全体が同キャメラで撮られている)。また、自然光撮影の広範な使用(暗所ではデュポン社のスぺリア4やイーストマン社のトライXといった高感度フィルムが使われた)や、望遠撮影の頻出が記録映画めいた外観を付与している。

mozi - 合衆国映画の復興期- 遠山純生-

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