モンテ・ヘルマンとの対話 ②

―─あなたの作られた二本の西部劇は、演出面でもちろん非常に似通っています。しかし両作の脚本はそれぞれ不可思議でありながら、その不可思議さが異なっています。たとえば『旋風の中に馬を進めろ』は、ずっとシンプルな物語を備えていますね。どのようにしてエイドリアン・ジョイスやジャック・ニコルソンと仕事されたのですか。そして、彼らはどうやって脚本を構想したのですか?

MH ジャックと私は、いかなる文学的な出典に依ることもなく、完全にオリジナルのアイディアを用いた。二人で話し合い、どのような種類の西部劇を作りたいのか自問し、脚本の出発点となるいくつかのアイディアを出し合った。45日間かけて、われわれは土台となるシチュエーションを見いだした。二人して研究し、あの時代のことを扱った論文を読んだんだけれど、そうした作業は脚本の最終稿を執筆するにあたって影響を及ぼした。

 もう一本の映画に関しては、われわれは友人たちにアイディアを提供してくれるよう頼み、エイドリアン・ジョイスがジャック・ロンドンの小説を携えて加わって、その小説が『銃撃』を生み出した。こういう話だ。二人の男が酒場のカウンターに腰掛けていて、誰かが撃たれているとかそういったような危機的瞬間を描いた絵を眺めている。二人は、その瞬間の前後に何が起こったのかまったくわからないまま、そういう場面を観察するのは何と興味深いことだろう、そしてそれはまるで人生そのものだと話し合っている。そして二人の男のうちの一人がもう一人に向かって、その絵は自分に何か奇妙なことを連想させると言う。一度ならず人生の神秘を自分に思い浮かべさせ、示すのだとね。(絵の中に描かれている)出来事を見ることはできるが、その出来事が何を意味しているのかはわからないと。そのとき彼は、自分がある女に雇われ、雪の中を通って彼女を案内した顛末を語る。ある時点で彼は、自分たちが何者かの足跡を辿っていることを理解する。そして数週間後、ついに二人は自分たちの前方に、そりに乗っている男を見いだす。女は彼に急げと言う。二人がその男に近づくと、女は銃を抜いて男を撃ち始める。そして男を殺してしまう。その後女は金を払って案内人を帰し、彼は女を二度と見ることはなかった。雇われた案内人の方は、その人物を追跡した理由がさっぱりわからない。私が描きたかったのは、それだけだった。

 ジャックとは毎日一緒にいたんだけれど、エイドリアンとはそれほど関わり合わなかった。ジャックと私はひたすらオフィスに座って脚本を書いてね。われわれがエイドリアンの作った物語の基本的な構成に同意したとたんに、彼女はあっさり書き始めた。登場人物がどのようになるのか、脚本がどのように展開していくのかまったくわからないままに。彼女は三~四日ごとに10ページほど執筆し、書けたものを私に読ませた。私は書けたものに応じて彼女に自分の意見を言い、私が熱狂したり咳払いしたりするのに応じて、彼女は書き続けたり、全部引き裂いたり、違った方向へ向かってスタートしたりした。ジャックと私が『旋風の中に馬を進めろ』の物語を構造化するにあたって作業したやり方とは逆に、彼女はどんな風に物語が終わるのかわからないまま書き始め、各場面が展開するにまかせていた。自分が正しい方向へ向かっているかどうか、知りたがっていたよ。彼女には脚本を書いた経験がなかったんだけれど、戯曲を一本だけ書いていた。それは上演されなかったんだが、読ませてもらった。恐らく私は『旋風の中に馬を進めろ』の台詞を一行たりとも書かなかったけれど、ジャックとはとても密に作業した。私は彼の書いていた脚本と結びついていたんだ。エイドリアン・ジョイスとの作業は、ちょっと俳優と仕事しているようなところがあった。彼女を励ましたり、落胆させたりしたんだ。エイドリアンがすべてを創り出し、私は彼女を刺激したのさ。

 ジャックも脚本を徐々に進展させていくような書き方をしていたよ。そういうやり方はエキサイティングな仕事の仕方だと思う。ジャックはとても暗くて、つむじまがりで、おかしな奴なんだけれど、とてもシニカルな人間でもある。そこに興味をそそられたんだ。

―─ある種の神話の正体を暴こうと企てたのだとおっしゃいましたね……。

MH われわれは特定の状況を予想できるような事態を嫌った。例えば、ジャックがミリー(・パーキンス)を納屋へ連れ出すシーン(『旋風の中に馬を進めろ』)。お決まりの場面だ――ある種の性的な事柄を期待させるね。われわれの映画には、性的なものがまったくない。

─―あなたはご自分の映画の中で、月並みな主題を好んで扱っておられますね。犯罪もの、西部劇、レースものといった主題に接近するように見せかけながら、ずれを生じさせていらっしゃるのです。

MH それは部分的に私のユーモアのセンスによっていると思う。観客に一杯食わせることを好んでいるんだ。そういう、観客の不意をつくやり方をね。『旋風の中に馬を進めろ』に有名な俳優を出演させて、映画が始まって15分後に殺してしまえるとよかったんだがね。そうすれば観客はショックを受けただろう。ヒッチコックは『サイコ』(60)でジャネット・リーを殺して観客にショックを与えたんだ。

──あなたの映画で繰り返し見られるのは、ゲームの使用です。これは意図的な仕掛けなのですか?

MH 初めは意識的なものではなかった。そう、『フライト・トゥ・フューリー』で、ジャックと私はそのことについて話し合ったんだ。だが『魔の谷』には、スロットマシーンやトランプの一人遊びが出てきた。『銃撃』には、穴の中に鹿弾を撃ち込むゲームが登場した。そして『断絶』には、ピンボール・マシーンと玉突きが登場する。そういうゲームを出したかったんだ。

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【モンテ・ヘルマン研究】

モンテ・ヘルマンとの対話 ④

モンテ・ヘルマンとの対話 ③


モンテ・ヘルマンとの対話 ②

モンテ・ヘルマンとの対話 ①


いくつかの原則 
モンテ・ヘルマン

『コックファイター』から
      『ボーン・トゥ・キル』へ

チャールズ・ウィルフォード

『墓碑銘(鏡に向かって)』
ジャック・ニコルソン&
           モンテ・ヘルマン


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