mozi - モンテ・ヘルマン研究- 遠山純生-

モンテ・ヘルマンとの対話 ⑤


──ファビオ・テスティと『チャイナ9、リバティ37』で仕事なさるにあたって、あなたは何に興味を持ったのですか? 彼はあまり知られておらず、どちらかと言えば特徴のない俳優ですが。
MH ファビオ・テスティは、あの企画の最初のメンバーだった。彼は私が参加する以前に、すでにいた。私がプロダクションから連絡を受ける前からいたんだ。だから会社がこの映画を私に提案したとき、こう言ってやった。「いくつか変更を加えることができるよう、同意してくれ」とね。実際私は二人の脚本家を雇って、彼らと一緒に脚本を完全に違ったものに書き変えてしまった。製作者たちは、それを容認したよ。続いて私はファビオ・テスティと会うために、ローマへと出発した。すぐにわれわれは深く理解し合った。友好関係が、仕事している間も続くかどうかはわからなかった。だがあの映画は私にとって並外れた経験となったから、彼と一緒にまた映画を作ろうと思っている。本当にファビオと仕事をしたいんだよ。彼には「本能」がある。本当に勘が鋭いんだ。もちろん、ファビオは立派なテクニックを持っているが、こういうテクニックは充分に発達していたので、隠され、見えなくなっていた。彼は完全に開かれた人間でね。「あんたが望むように、俺を動かせばいい」と言ってくれた。すべてを受け入れてくれたんだ。信じがたいことさ。ある場面で、ファビオはあたかも自分が俳優ではないかのように演じている。私にしてみれば、そういう俳優こそ最良の俳優だ。最良の俳優は、演じることを意識しないんだ。


──ウォーレン・オーツも? 彼はまるでそうした俳優ではありません……。
MH そう。私はウォーレン・オーツと四回一緒に仕事した。彼は外向的であると同時に内向的だ。ファビオは観客を自分の方に引きつけるが、オーツは観客の方に歩み寄ることはしない。彼はまるでゲーリー・クーパーのようだと思う。


──『チャイナ9、リバティ37』の冒頭で、われわれは、この映画は愛の物語になるだろう、ファビオ・テスティは情熱に身を任せるだろうという印象を抱きます。しかし結局、全然そうはならないのです。
MH ファビオの演じる男は、両義的なんだ。彼は愛を受け入れたいと思うと同時に、自分があの女 [ ジェニー・アガター演じる人妻 ] を愛することができないとわかっている──あの男の人間的本性ゆえにね。彼は女と別れながらも、彼女のことを守らなければならないと思っている。男は最後まで、両義的な姿勢を断固として保っている。たとえ彼が女を救いに戻って来たとしても、またたとえ観客が彼の姿勢を誤解することがあるとしてもね。


──しかし愛の物語が成就せず、男が人を殺すはめになったり殺さなかったりするといったようなことは、観客にとってあまり居心地の良いものではありません。あなたは本当にこの映画を安心して観られる西部劇だと考えているのですか?
MH たぶんそうじゃないんだろう。わからない。

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【モンテ・ヘルマン研究】

モンテ・ヘルマンとの対話 ⑤

モンテ・ヘルマンとの対話 ④

モンテ・ヘルマンとの対話 ③

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モンテ・ヘルマンとの対話 ①


いくつかの原則 
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『コックファイター』から
      『ボーン・トゥ・キル』へ

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